藤本壮介の建築:原初・未来・森とは
「藤本壮介の建築:原初・未来・森」とは、2025年大阪・関西万博の総合プロデューサーを務められていることで有名な建築家、藤本壮介さん初の大規模個展です。
展覧会の基本情報
以下は記事作成時の情報です。最新の情報は 公式ホームページ 等でご確認ください。
項目 | 内容 |
---|---|
会期 | 2025年7月2日(水)〜11月9日(日) 期間中無休 |
開館時間 | 10:00〜22:00 (火曜は17:00まで。8/27は17:00、9/23は22:00まで) 最終入館は閉館30分前 |
会場 | 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) |
入場料 (税込) |
平日: 一般2,300円 (オンライン2,100円) 学生1,400円 (1,300円) 中学生以下 無料 シニア2,000円 (1,800円) 土日祝: 一般2,500円 (2,300円) 学生1,500円 (1,400円) シニア2,200円 (2,000円) |
チケット形式 | 日時指定制 オンライン購入可、当日窓口で残券があれば購入可能 |
主催・企画 | 主催:森美術館 企画:近藤健一・椿玲子 (森美術館キュレーター) |
「原初」「未来」「森」──三つのテーマ構成
テーマについてはあまり意識せずに回ってしまったのですが、後から振り返ってみると確かにそういう内容になっていたと思います。
「原初」についてはよく分かりませんが、インタビュー動画などを通じて紹介されている「建築家としての原点のような部分」のことを指しているのかなと思いました。
「森」については幼いころ過ごした森と東京の街並みに共通点を感じたというインタビューが映像展示にありました。建物を見るだけでは分からない裏側の思想が分かったのは興味深かったです(「原初」にも関連しているかもしれませんね)。
「未来」については大阪万博の建築が現在から未来を見据えたものであったのと、最後に未来の建築像を提案する大胆な展示がありました。
このように書きましたが、実際にはどの展示がどれと明確に分かれてはおらず、どの展示も三つのテーマが絡み合う形で構成されていました。
藤本壮介建築の魅力を体感する展示内容
代表作の模型と空間演出の見どころ
最初の展示室に入ると、模型の数に圧倒されます。
あの数の模型をすべて保管していたと考えると相当なスペースが必要となりそうですが、建築事務所というのは過去の模型をすべて保管しているものなのでしょうか(無知)。
各模型の説明プレートにある黄、緑、青のマークはそれぞれ以下の意味です(展示室の端にある作品の関係図のところに説明があります)。
- たくさんのたくさん(many many many)
- 未分化(amorphous)
- ひらかれ かこわれ(open boundaries)
この部屋で模型をよく見ておくと、後の展示で図面が出てきたときに比較できて面白いです(スライドの映像展示で出てきます)。
展覧会全体を通しての最大の見どころは、5分の1サイズの大屋根リングの模型、そして仙台のメモリアルホールの模型だと思います。これらは木製で、実際に建物に入ったような体験ができるようになっています。ホールの方は展示室に向かって右手の細い通路の方に行かないと内部の体験はできないので、そちらにも行かれることをお勧めします。
建築型のぬいぐるみ達が会話している展示も目新しくて面白かったです。
来場者目線で感じた展示空間の工夫
建築家の個展を訪れる醍醐味は、展示空間全体も作品となっていることだと思います。今回の個展でいうと、まずは最初の模型の展示です。
建築学生だった頃に建築模型を作ったのを思い出しました(といっても私は設計専攻ではなかったので授業の課題で作っただけで卒業制作はしていないのですが…)。
大量に模型が展示された複数大学合同の卒業設計展のようなものに足を運んだことのある方は、その展示が学生ではなくすべてプロの作品になったようなものだと考えてみるとイメージしやすいかもしれません。
建築専攻の私が感じた学びと気づき
建築的視点からの考察
住宅から巨大な施設まで多くの展示に触れましたが、模型を見ているだけで中で人々が動いているのがイメージできるものばかりでした。
図形の配置や曲線などは、すべてが計算によって導けるものではないと思いますが、どれだけの考察を経てたどり着いた結果なのかというのは膨大なスケッチから伝わってきました。
学生や建築ファンにおすすめできる理由
インタビューの展示で心に残っているのが、
- 今は木造建築の時代である
- 日本の木造建築は遅れている
というものです。
大阪万博の大屋根リングが巨大な木造建築となっているのはこれを踏まえてのことだと知って見る目が変わりました。
そして、デザインがシンプルなリングとなっているのも大きなメッセージが込められています。
大屋根リングに関しては巨大な展示があるので、そのメッセージを肌で感じることができます。
展覧会をより楽しむためのガイド
写真撮影の可否・混雑状況・グッズ情報
写真撮影の可否
会場はほとんどの場所で写真撮影が可能です。一眼レフカメラを構える方も多かったです。
作品保護のため、作品の真上からの撮影は禁止となっていました。
大屋根リングに関しては多くのパネルが円柱形に並んだ展示もあったのですが、そちらはパネル単体での撮影が禁止で全景のみ撮影可能となっていました。3社が異なる技術を用いているというので、それぞれの技術を紹介したパネルを撮影したかったのですが、それはできませんでした。
混雑状況
私が足を運んだのが日曜日のお昼過ぎだったのですが、空いてはいませんが自由に歩き回れる程度の込み具合でした。何かを見るのに待ち時間が生じるということはほどんどなく、人が少ないものから順に見ていけば問題なくすべてを見ることができる感じでした。
何か所かインタビュー映像が流れる展示があるのですが、そちらは再生時間の半分くらいは席について見ることができました。
タイミングにもよると思いますが、比較的快適に回れる展覧会だと思います。
グッズ
ショップを覗きましたがグッズはあまりなく、行った時期が早かったため図録は予約受付のみでした。最後のゾーンで展示されていた未来の建築の冊子があったら欲しかったですが、それも見当たりませんでした。
少ない中で目を惹いたのは藤本さんの作品が作れるペーパークラフトです。
おすすめ書籍・図録・関連作品紹介
図録は会場だけでなく、ネットからもご購入いただくことが可能です。
「藤本壮介の建築:原初・未来・森」展覧会カタログ|Exhibition Catalogue “The Architecture of Sou Fujimoto: Primordial Future Forest”| 森美術館オンラインショップ(MORI ART MUSEUM ONLINE SHOP)
以下は関連書籍です。
思想をより深く知りたいと思われた方はこちら。建築学生なら誰もが知っている雑誌「GA JAPAN」のエッセーをまとめた一冊。
ドローイングに興味を持たれた方はこちら。
藤本壮介スケッチ集 | 藤本壮介(Sou Fujimoto) | GA gallery Bookshop/Tokyo Book Center co,.ltd.
実際に足を運んだから分かった注意点
会場へは大きな手荷物の持ち込みが許されておらず、会場に上がるエスカレーターの手前でロッカーに預けるように促されます。代金100円のコインロッカーで、返金式となっています。
小銭がない場合、1000円札に限って両替機で両替ができます。それもない場合、ロッカールームに入って右手にあるインフォメーションセンターに行くとなんとかしてくれます。
ロッカーに財布を置いて行ってしまうと最後にショップでお買い物ができなくなるのでご注意ください。
会場周辺のおすすめスポット
森美術館のある森ビル内では、同時に複数の展覧会が催されていることが珍しくありません。以前エジプト展に訪れたときは、AIの未来展にも足を運びました。
チケットは入場時間指定なのでエジプト展だけ事前購入し、(エジプト展の所要時間が分からないため)入場時間が読めないAIの未来展は森ビル内美術館のあるフロアにあるカフェでお昼を食べながら当日ネットで購入しました。
窓口ではなくネット購入したのは値段が少し安くなるからです。
美術館のフロアからエレベーターで降りた出口のフロアにもミュージアムショップがあります。ここには過去の展覧会の図録なども置かれているので、立ち寄ると楽しみが広がります。
東京都立美術館や西洋美術館の最寄りである上野駅までは、森美術館の最寄りの六本木駅から電車で30分ほどで移動できます。体力のある方はそちらとはしごするのもお勧めです。